学生のための読書案内

1997年から研究室の学生に向けて、インターネットの掲示板を使って読書案内をしています。ジャンルは学業向けではなく、ほとんど趣味の領域です。
役に立つ・立たないは二の次にして、読書の世界を広げる一助としてください。

1997年

OKDの今月の1冊 投稿者:岡田成幸  投稿日:07月23日(水)10時13分21秒   
卒論生・修論生諸君。そろそろ論文の書き方を勉強し始める時期です。格好の一冊を紹介します。

  上田明子(1997)
  英語の発想
  岩波書店、1100円

卒論・修論は英語でというわけではありませんが、「明快な英文を書く」という副題がついている本書は、日本文を書く上でも十分に役立つものです。
論文は内容で勝負すべきものであることはもちろんですが、分かってもらうための修辞学・展開法を知っておくことは大切です。英語にはそのための教育があるくらいですが、その講義ノートのような出来映えの本です。
筆者はパラグラフを大切にと解いています。そのパラグラフを構成する方法、トピック・センテンスの重要性、パラグラフ間の構成法等々を、豊富な英文を例に説明がテンポよく進められています。

これを読むと、英語は論理を重んじる言語であることがよく分かります。一方、日本語は懐が深い言語で、多少の矛盾は言い回しでなんとでもなってしまう恐るべき言語なのでしょう。拙著の日本語の難解さはこの懐の深さに一因があるのでしょうが、名文家の文は難解の中にも論理展開の矛盾がないところが名文のいわれです。この本に書かれている技法の殆どは、日本語で「論文」を書く場合には役に立つことばかりだと思います(死語と化した「恋文」にこのような論理学はどうでしょうか)。

「論文」を書く前に、一読をお奨めします。英語に多少の取っつきにくさを覚える人には次のような読み方をご教示しましょう。

この本で取り上げられている英文には、かなり正確な訳文がついています。そちらを先に読み、情報を仕入れておいてから、英文を読む。このような読み方をすれば、読書のスピードを落とさずに読むことができ、また、内容をきちんと把握することができると思います。

OKDの今月一冊(その2) 投稿者:岡田成幸  投稿日:09月04日(木)23時33分
その2です。
その1の反響が全くないので、止めようかなとも思っています。

今月の一冊ですが、今月は二冊紹介します。   

 その1:松山幸雄著、イメージ・アップ(国際感覚を育てるために)、朝日出版社
松山幸雄を知っていますか。元朝日新聞論説主幹。有名なところでは、「勉縮のすすめ」 の著書があります。分野で言うとエッセイ。その好調エッセイシリーズの一冊です。若輩者には分別くさく写るかもしれません。しかし、論説主幹を長年経験しているだけはあります。正論がちりばめられた好著だと思います。後退史観とかマルドメ派といったテクニカルタームがうれしい。教育論(大学および幼児教育)として、また生活姿勢のプリンシプル構築に極めて有用なことに納得です。   

 その2:日本経済新聞社編、2020年からの警鐘、日本経済新聞社
日経新聞で好評連載中の記事を、単行本化したものです。今も連載中なので、続巻がおそらく出るものと思われます。日経新聞のホームページでも読むことができます[1]。要するに、30年後の未来予測もので、確たるデータに基づいての予測です。被害想定をやろうとしている人には必読かも(?)。

おまけ もう一冊ついでに紹介してしまいましょう。   

 その3:NHK国際局経済プロジェクト編、対訳:英語で話す日本経済Q&A、講談社
外国人にとっての日本の謎に答えるQ&A。データが豊富でおもしろい。
たとえば、日本の社長の給料は新入社員の何倍でしょうか。  
①10倍 ②50倍 ③100倍
答えは、①。因みに米国は②。なぜ日本の社長はそんなに給料が安いのか。と質問が続く。答えに納得。答えが知りたい人は買って読んでください。対訳本なので英語の勉強にもなるが、日本語を読むだけでも結構おもしろい。
ところで、日本の教授の給料は助手の何倍か? 
①1.5倍 ②1.6倍 ③1.7倍 選択肢の寂しさに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
OKDの今月の一冊 投稿者:岡田成幸  投稿日:10月22日(水)18時31分25秒
研究会で紹介したので止めようかとも思いましたが、正式のタイトルをお教えしていなかったので載せます。   

 自然の中に隠された数学、草思社

紹介したように、数学的ものの考え方に対する示唆が多い書である。また、数学者のフラストレーションに至っては、書物内で実験が展開されており、実体験できる。過去に同じ様な体験をしたものならば納得できると思う。これは発想のキーである。

ついでにもう二つ。   

 高木隆司:理科系の論文作法、丸善ライブラリー、660円   
 坪田一男:理系のための研究生活ガイド、講談社ブルーバック、760円

卒論・修論の書き方講座を、この2冊を紹介することで省略します。 両者の方法論比較をするとおもしろい。高木隆司氏(熟年派)のは主として論文作成法。坪田氏(若干40歳)は主として研究スタイル(+普段の生活)編。

坪田氏は眼科医でNHKによく出てくるので知っている人も多いと思う。私個人は、既に実行しているものが大部分で両者から学んだものはほとんどないが、初学者には丁寧なガイドラインとなろう。

高木氏のは「表題の付け方」「数式の書き方」「文章例」など、まるで英論文の書き方のように、詳しい。書き方だけではなく、壁にぶつかったときの対処法、学会での懇親会での処し方まで・・・よけいなお世話っぽいところまで、手取り足取り。


1998年

肩の荷を一つ降ろして[2] 投稿者:OKD  投稿日:02月17日(火)19時23分12秒
やーれ、やれやれ。

■ It doesn't mean 'go for it'. It's a sigh of relief.

修論発表、終わりました。皆さん、いろんな形で関わったものと思います。みんなまとめて、ご苦労さん。後始末もしっかり頑張ってください。
打ち上げの飲み会がキャンセルされ、ねぎらう機会を失しましたので、掲示板で代えます。

ところで、最近、我が家でフードプロセッサーを入手しました。ワードプロセッサーではありません。刻む・混ぜる・こねるをやってくれる機械です。早速、手打ち蕎麦に挑戦してみました。つなぎは小麦粉で、八割蕎麦に挑戦。水加減が分からなくて、最初はどろんこ遊び、あとは紙粘土細工のような感じ。打った蕎麦を切っているうちに、ぼそぼそになって、わんこ蕎麦の長さになってしまった。しかし、うまい。したざわり、こしの強さ抜群で、蕎麦は手打ちに限る。
それで今、そば粉を所望しています。一番粉(蕎麦の実の中心部を粉にしたもの:大吟醸だと思えばよい)は手にはいるのですが、二番粉、三番粉を売っている店を知りませんか。もっと蕎麦らしくするには、外側の粉が必要なのです。教えてください。

話、変わって・・・・・・・・
忙しい日々が続いているけれど、ビデオも見続けています。
セブン(この手は苦手だ)、ライヤー・ライヤー(喜劇に涙を絡ませた、典型的アメリカ映画。父親ならほろっとくる)、ファースト・ワイフ・クラブ(・・・・)、リトル・ブッダ(英会話の勉強に最適)、古畑任三郎シリーズを制覇、ついでに、あしたのジョー2シリーズも制覇した。シリーズ1はビデオ化されていないのかな。

今月の1冊も休刊中ですが、最近読んでおもしろかったものをついでに紹介しておきます。学術書関係はなし。

   ロバート・フック:朝日選書
  科学史を研究している若手研究者が書いたものですが、書き手としての力量十分で読ませます。

  中谷宇吉郎:北大刊行会
  この本から研究のヒントをいくつか得ました。

  推理小説の経済倫理学:講談社
  読んで純粋におもしろい。

  学者人生のモデル:岩波書店
  今読んでいる本。

吉武輝子を知っていますか。小説・評論家です。ラジオでおもしろいことを言っていました。
定年制は世代教育上必要である。老年世代が現役で頑張っていると、老年世代を養うべき次世代が育たない。機会を与えないと幼いままで大人になれない。その機会を老人世代が奪っていることに気づくべきである。最近、商工会議所に行って驚いたそうである。30~40代の世代の人達が幼く見えた。理由は、その人たちのおじいさん世代が未だに現役で頑張っており、出る幕がない。そのために大人になれないでいる。老人たちを養っていこうという気持ちが若い世代に生まれるわけがない。

うんちくのある言でした。
トルコでのホテルライフ[3] 5月7日
私が滞在したホテルは、アンカラのダウンタウンからちょっと奥まったところにあるKing Hotel、三ツ星である。ご承知のように、ホテルのランクは無星から五つ星まで。五つ星は、アンカラではヒルトンホテルとかシェラトンホテルがそうである。五つ星になるにはホテルの施設・規模・客室係等々に相応の質が要求される。キングホテルは規模において小さいために三ツ星に甘んじているが、清潔さ・接客態度等は四つ星以上であると私は評価している。因みに宿泊料金は、五つ星が$100/泊で、キングホテルは$55/泊である。 さて休日以外は、公共事業省から帰ってきたらホテルで時間をつぶす以外にない。ベリーダンスはアンカラでは四つ星のデデマンホテルぐらいでしか見ることはできないし、しかもこのホテルのベリーダンスは中途半端であまりおもしろくないので、わざわざ出かけていく気にもなれない。必然、ホテルでテレビ鑑賞・読書三昧となる。以前はホテルでも仕事一途であったが、今回はそんな気にもなれなかった。 読書環境はすこぶる良好。邪魔は入らないし、部屋は広くて、今回も数冊日本から持ってきたのだが、書棚をセットし書斎化してしまった。しかし、今回の私はすべてにおいてpassive状態であったため、ピッチはあがらなかった。以下、読書案内。 皆さんは海外旅行にどんな本を持っていくのだろう。私は長期出張の場合は、数種類を携えていく。気持ちに波があるからだ。読んだ順に紹介しよう。但しここで紹介するのは、いつもの「今月のお薦めの一冊」とはちょっと違う。精神安定剤としての要素が強いからだ。お奨めはしない。

  第1冊:●●本。いきなり●●本だ。著者・題名等は教えない。●●本で思い出したが、先日、村上公一君[4]から結婚通知のはがきが舞い込んだ。その文面で、夢枕獏のサイコダイバーシリーズのことに触れていた。すべて読んでしまったというのだ。以前彼にこのシリーズについて話したことを思い出した。これも一種の●●本であるが、ベースに空海があり、密教についてうんちくが傾けられているので、引き込まれてしまう。ただし、挿し絵が恥ずかしい。この手の本に挿し絵はいらない。家でこのシリーズを読んでいたら、カミサンから白い目で見られた。新婚さんの前では広げない方がいいと忠告しておこう。

  第2冊:宮部みゆき著・火車。成り行きが最後まで読めないので、サスペンスものなのであろう。しかし、社会派でもある。クレジットカードの仕組みについてじっくりと教えてくれる。宮部女史はよく勉強しており、情報小説としても一級だと思われるし、ストーリー展開もおもしろい。しかし、登場人物に魅力がないので、もう一冊読んでみようという気にはなれなかった。出張さん[5]なら別の意見があるかもしれない。

  第3冊:ディック・フランシス著・奪回。ご存じの競馬シリーズである。私の愛読書の一つであるが、主人公が魅力的なのがその理由。物語展開のパターンはいつも同じだ。主人公が危機に陥り、それを切り抜ける。危機の種類がいつも異なり、そこから切り抜ける機知も多様で、危機管理のあり方を教えてくれる。今回は、誘拐犯とのネゴシエーションの仕方が学べる。そんなことはないと思うが、ついでに誘拐されたときの心の持ちようも学べる。

  第4冊:立花隆のすべて。厚い本だ。しかし中身は軽いので、すぐに読める。立花隆は優れたメッセンジャーではあるが、研究者ではないというのが、これを読むとよくわかる。研究者には向かない性格なのだろう。既成知識の体系化には意欲的だが、そこで満足してしまう(あるいは興味を失ってしまう)ようだ。研究とは、その先のことをいうのだが。

  第5冊:仲田紀夫著・宇宙人と交信する方法。ふざけた書名からは想像できないと思うが、中身はしっかりしている。著者は旅行数学者である。著者を知らなければ、私も手に取らなかった本である。数学の原点を求めて世界各地を旅行し、その紀行文をシリーズ化したものである。地球語で宇宙人と交信はできないが、数学ならばひょっとして交信できるかもしれないというふれ込みである。本書は線形計画法にも優しく触れている。

  第6冊:塩野七生著・イタリア遺聞。彼女の本にしては珍しく飽きが来た。随筆は今ひとつか。塩野女史には、やはり得意とする中世の男を語ってもらいたい。「オジサン改造講座」のノリで楽しいのだ。レパント海戦がお奨め。 ここで力つきた。他に環境問題を扱ったカーソン著・沈黙の春、仕事関係の論文数編をもっていったが、手つかずで持ち帰った。要するに軽い本しか読めなかった。
OKDの今月の一冊と一本(その6)   7月6日
間が空いてしまった。本を読んでいなかったわけでもなく、ビデオを見なかったわけでもない。単に目次つき書名を紹介するだけなら簡単なのだが
[6]・・・・・・・・。

今回は、悩める男・山下浩二[7]に捧げるこの一冊といこう。
悩みは何処にでもあるのだ。NHKの連ドラ「天うらら」[8]を見よ。大工の親方との約束事項(職場恋愛禁止)を破ったうららと親方の悩み。恋愛は続けたい・仕事も続けたい(うららの気持ち)。恋愛は認めたい・仕事も続けさせたい(親方の気持ち)。しかし、約束はけじめだ、反故にはできない。この難問の対処法は、悩み続けることではない。問題の実体を明らかにすることだ。教科書はたくさんある。フィクション系小説は典型的難問の解法をシミュレーションしている。難題は悩むべきではない。解決を楽しむものなのだ。

  ■ジェフリー・ロビンソン著:ザ・ホテル(三田出版会)。
ホテル業は難題解決業である。ホテルは設備や調度品に目がいきやすいが、それに騙されてはいけない。サービスを提供するのがホテルであると、ラベリング[9]してしまおう。何処までの要求が許されるのか、この本を読むとよく分かる。何でもありだ。その難問にホテルはどう予防線を張り、かつ客へのサービスを質を落とさずに提供できるか、日々考えている。ホテルマンが女性客に誘惑されたらどうする(と言うことは、誘惑してもいいと言うことだ)、夜中に韓国ウォンの両替を要求されたらどうする・・・・・、マニュアルに書いていないことへの対処法を是非学んでもらいたい。

  ■三富克彦著:ホテルマン日記(KKブックス)。
ホテル業に関する日本版。前書がホテルの裏方日記ならば、こちらは客の側からの利用手引き書である。ホテルは外見ではない、従業員の質であるというのがよく分かる。

さて、大学審議会からの答申が出た。大学の出口をもっと厳しくせよとのことらしい。参考になる本がある。

  ■三輪裕憲著:ハーバード・ビジネス・スクール(丸善ライブラリー)。
大学の1単位というのは、45時間勉強し、試験に合格したものがもらえる世界共通の履修証明であるということを、最近知った。日本では1週2時間の講義を15週受けて合格すれば、2単位もらえることになっている。つまり、毎週2時間の講義と4時間の自習を15週やることを前提としたカリキュラムなのだ。学生は1教科につき毎週4時間の自習をやらねばならないのだ。本書は米国での留学を経験した著者が、その学習実態をこと細かく描写したものである。早朝の勉強時間(5:00~7:00)確保・受験戦略・成績が思うように上がらないときの方法論の見直しなど、啓発される。但し、学生いじめの書として。やる気が出てきた。

戦争関連は私の愛読書の一つである。戦争は先端科学と先端倫理学・哲学そして自己正当化論理学の宝庫である。
  ■ジョージ・フリードマン著:戦場の未来(徳間書店)。
ダビデの投石器から筆を起こし、キラー衛星に至るアメリカの兵器論である。目的の明確化と意志の集中が戦略の前提とは、研究論につながるものがある。

もう一冊。鉄道の本を紹介しよう。趣味が変わったわけではない[10]。純粋に鉄道の本であるが、システム論として読んでみた。おもしろい。

  ■須田寛著:東海道新幹線三十年(大正出版)。須田寛をご存じだろうか。JR東海の総裁(今は社長というのだろうか?)である。鉄道の目標・ニーズを理解し、発言に方向性がある。鉄道の目標はスピードの追求である。そこから生まれた時間を客に提供する。鈍行の郷愁に価値を見いだす人もいる。しかし、鈍行はコストがかかる。単位時間当たりに運べる客の数は少ない。それだけの対価を支払っていただけるのなら、鈍行のサービスも続ける。要は色々な選択肢を客に用意するということなのだ。

入院時[11]の読書計画は未だ立てていない。お奨め本の紹介を待っている。


さて、ビデオである。戦争物1本と三谷幸喜を2本紹介する。

 ■「エアフォース・ワン」。ハリソン・フォード主演。いつも2.5枚目役を演じているところが好感が持てる。かっこよすぎは良くない。しかしこの映画、おもしろいのであるが、途中から白けてしまった。愛国心の強要しすぎである。大統領はアメリカそのものであり、国民は大統領のために命を捨てる。大統領が助け出されたとき、国民がガッツポーズをとるところで胡散臭くなり、白けてしまった。愛国心は嫌いではないが、何事も「過ぎ」はよくない。

 ■「12人の怒れる男達」のリメーク版ができたそうだ。黒人少年の犯罪に対する陪審員の議論風景のみの映画である。最初、有罪:無罪=11:1であったのが、議論していくにつれ無罪支持者が増えていく。「12人の優しい日本人」はそのパロディである。若くて美人の妻が殺人容疑をかけられている。最初、有罪:無罪=1:11であったのが、次第に有罪支持者が増えていくという、逆パロディである。しかも、論理派が有罪支持で、感情論派は無罪支持である。さて大逆転なるか。三谷幸喜は人間観察が鋭い。意見を言ってるようで実は言ってないヤツ。他人の意見を巧みにパクるヤツ。付和雷同なヤツ。意見のふりしてただ事実だけを述べているヤツ。見事だ。そういえば最近、学食で長時間語る学生が増えてきた。ただ語ってるだけのヤツである。雑誌や本で得た知識だけを語っている。自分の意見は何もないようだ。胡散臭いヤツだ。研究でも知識だけ語るヤツがいる。自分の意見を語れ。

 ■「ラヂオの時間」も純粋におもしろかった。難局をいかに切り抜けるかという話であるが、生放送という時間条件が難しさを自乗する。スピード感が楽しめる。
OKDの今月の一冊(その7)[12]
ある研究ミーティングで災害社会学者が使っていた英語である。

 kith and kin

こんな英語、聞いたこともない。辞書で調べると親類知己のことを言うらしい。但し書きに「古風:1300年代の言葉」とあった。こんな難しい英語使うな、と言いたいが、社会学では普通らしい。このような人々を

 snobな方々 【衒学者】 

などと言っては申し訳ないが、この程度の言い方ではまだまだ社会学者には相手にされない。これならどうだ。

 sesquipedalian

意味が分からなかったら辞書で調べなさい。英国人に教わったれっきとした現代語だ。
  ■超明快訳で読み解く日米新ガイドライン
こんな本は如何でしょうか。英語の学習によろしいかと。


1999年

OKDのお待たせの一冊(その8) 12月6日
さてと、一年半ぶり。

ほとんど反応のなかったこのコーナー。考えてみれば当然だ。自分が読みたい本は自分で選ぶのが、普通人だ。読めと言われて、読むような輩などしれている。そもそも今時の○※▼□は本など読まないだろう。自分の価値観は自分で決める風を装うのが、今時の○※▼□である。いや、これは嘘だ。昔の○※▼□だって、そうだった。○※▼□はそのように粋がるところが○※▼□なのだ。人が読んだ本など読めるか、俺が読む本は俺自身で決める!

そんなわけで、「ほとんどよけいなお世話コーナー」であった。反応がないのも当然だ。 研究だって同じだ。研究スタイルは自分で開拓していくものだ。真似事ばかりだと、真似するネタを探すようになる。

しかしである。オヤジから一言、言っておきたい。・・・・

基本のなっていない者が、自分流を押し通したら、それは、ドクダンが落ちだ。独断だ。ある程度までは、真似っこは推奨されるということだ。かく言うokdも少し前までは、YOism[13]踏襲派であった。べつに真似っこを非難しているわけではない。人が何を考えているのか、何をしようとしているのか、何に向かっているのか、何を読んでいるのか、他人に興味を持つのは○※▼□の当然の行為だ。他人に興味を持たなくなったら、agingを疑ったほうがいいかもしれない。

長い前置きは、このコーナーの一時復活の前振りなのだ。「唐突」はokdの論理学が許さない。何とか理由を付けて、読んでいる本を紹介したい。この衝動はどこからくるのだろう。

■この一冊:助手[14]と太田[15]には、北淡町のかんぽの宿で紹介した[16]
以下の英文の違いが分かる人は、この本を読む必要などない。
 1. I love a girl.
 2. I love girls.

卒論打ち上げの3次会の席でこの話題を出したとき、西田[17]は分かっていた。さすがである。
答えは、私はある特定の女の子が好きだ、と、私は女好き、の違いである。大きな違いだ。でも、説明されれば分かる話だ。
では次の問題はどうであろう。
 1. I saw no lights there.
 2. I saw no light there.

一見、簡単な文章である。しかし、両者の意味は全く違う。違いが分かるだろうか。
これはどうだ。この違いが感覚的に分かる日本人がいるのだろうか。
 1. Every day jets are flying in the Tokyo skies.
 2. Every day jets are flying in the Tokyo sky.

これは?
 1. You have no plates?
 2. You have no plate?

Nativeならば、これだけで郊外レストランか我が家の食卓かのシーンをイメージ仕分けるらしい。日本人が最も弱い冠詞・複数型の話なのである。この使い分けを論理的に説明している本がある。これを読んだからといって使い分けられるかどうかは疑問であるが、英語の発想法が分かる。以上の問題に答えられなかった人は、読む価値があろう。

  小泉賢吉郎(1989)
  英語の中の複数と冠詞、ジャパンタイムズ、\1,240

■この一冊:科学史に興味があるだろうか。ないのならビジネス誌はどうだろうか。
非力な弱動物が、弱肉強食の世界を生き抜くための武器は何か。このような出だしで、ぐいぐい読者を引っ張っていく。答えは自分で考えてほしい。okdは「多産」かと思ったが、人間社会にも通じる真理は違うところにあった。これは科学史の分野に入る本なのであろうが、okdは人間の原論として読んだ。書きっぷりが楽しい。おそらく訳者の力量であろう。ソフィーの世界を彷彿とさせるやさしい語り口である。ものごと(自然科学のみではなく社会科学・ビジネス論にまで踏み込んでいると理解できる:但し、読み手の理解力に依存するであろうが)の有り様を高度な内容にもかかわらず、読み手に合わせて理解できるように工夫されている。これだけ広い年齢層を満足させる(と思われる)本も珍しい。そんなわけで、1章だけでもいいから読んでみろ、と子供[18]にも読ませようとした。1章だけ読んでくれた。

  アイリック・ニュート(1999)
  世界のたね、NHK出版、\2,000

■この一冊:●●本はお好きかな。でもこれは●●本ではない。
長期の海外出張には必ず●●本とサスペンスものと仕事関係の本を持っていく。大体がこの順に読んでいくのだが、今回のトルコ出張[19]は、夜も忙しくて読んでいる暇などなかった。残念。
サスペンスには、必ずいい男といい女が出てくる。そして状況設定に危機一髪がある。フィクションには興味がないというものもいるであろう。たかが作り話ではないかと。そういう考えを持っている君。たった今、その考えは捨てるべきだ。前にも書いたかもしれない。サスペンスは、問題解決学なのだ。しかも、ill-problems[20]。あり得ないからこそ、危機状態をこれでもかという具合に悪状況下を設定できる。その解決方法に著者のノウ・ハウが披露されていれば言うことはない。その解決プロセスは君の実生活でも必ずや役立つであろう・・・・なんてことはないかもしれないが、ヒントは与えてくれる。

今回同行した世界的●●医者、いや世界的えらい医者[21]、彼は災害医学が専門なのであるが、ハードボイルド小説家・柘植何某の愛読者である。彼の言う危機脱出のノウ・ハウに嘘はないと言う。
本とはそういうものだと思う。自分の世界にどれだけ近づけて読めるか、それが勝負である。

  門田泰明(1994)
  白の重役室、光文社文庫、\640


2006年

OKDの名古屋工業大学からの初めての一冊(その9) 9月26日
前回の更新が7年前とは、我ながら驚いている。
研究室のホームページには掲載していたのだが、こちらのコーナーにもコピーしておく。

■J.ディーバーを読む。
ジェフリー・ディーバーのクリスマス・プレゼント(文春文庫)を、GWなのにぎっくり腰で何もできない体をもてあまし、読んだ。文庫本の帯には「どんでん返し16連発」とある。これは読者が読みながら抱く犯人像が、土壇場でどんでん返しに合うという意味である。ディーバーを読むのは初めてであったが、十分に楽しめた。たとえば、殺人犯がその罪の責任を問われるかどうかを精神鑑定医の目を通して話が展開される。途中から、あれ、なんかおかしいぞと、読者(私)は思い始める。一番悪いのは殺人犯ではなくて・・・。また別の話では、ストーカーにつきまとわれている娘を助けようと駆けずり回る父親。警察は何もしてくれない。事故でストーカーは死ぬが、仕組まれた殺人であった。なぜか父親が犯人として逮捕。真の犯人は?真のストーカーは?あれ・・・、という具合に、読者は最後でディーバーの仕掛けに気づく。しかも16連発。
 この本の魅力を堪能すると同時に、読者を自分のつくった虚世界に知らずに引き入れる技術を学んで欲しい。もちろんポップ科学の驚き批評家になるためにではなく、そのような批評文あるいは論文、そしてコメントに騙されないために。レトリックがふんだんにあしらわれた短編集であるが、レトリックを修辞法という綺麗な日本語で当てるのは間違いであると痛感する。このテクニックは読者を自在に操る悪の技法に変身する。確かにレトリック(rhetoric)にはトリック(trick)が内包されているが。

  J.ディーバー:クリスマス・プレゼント、文春文庫

■防災研究者にお勧めする本。
日本自然災害学会の学会誌企画編集を担当している。その特集記事として「防災研究者の書棚(仮題)」を企画中である(2007年2月刊行予定)。学会員から推薦図書を紹介してもらおうというものであり、自分も以下に紹介しておく。

  吉岡友治:だまされない<議論力>、講談社現代新書

最近の著作からという限定付きで紹介する。評論・社会科学・自然科学を問わず、思索法にも定型がある。論理展開力・説得力をのばすためにも、そしてなによりも、自分自身の間違った思索に溺れないためにも、身につけておきたいルール集。紋切り型(いわゆる常識)を疑うことの重要性を教えてくれる。科学を極めるスタンスのあり方を見つめ直すきっかけを与えてくれるかもしれない。防災対策の意思決定ルールとして対費用便益の最大化あるいは地域社会の最大利得を目的関数にする場合が多いが、それがいつも最適解とは限らないし、地域住民からもその対策に賛同を得られない場合も多い。なぜだろう。本編における民主主義と全体主義の議論にその一つの解を見ることが出来る。

■防災を学ぼうとする学生へお薦めする教科書。
以下、同じ趣旨である。

  R.P.ファインマン:ファインマン物理学、岩波書店

物理学は災害科学の基礎を与える。本シリーズを読むと、たとえの妙と高校程度の数学で物理学の本質に迫らせる説得力に圧倒させられる。読み物としても面白い。分かることの楽しさを教えてくれる教科書である。同氏によるコーネル大学における古典力学と量子力学の講義録(物理法則はいかにして発見されたか、岩波現代文庫)は、研究者の研究に対するワクワク感が伝わってくる。教える立場からも必読である。

  R.P.ファインマン:物理法則は以下にして発見されたか、岩波現代文庫


[1] 現在は読むことはできないと思われる。

[2] 修論発表の後に投稿したものです。

[3] 海外出張から戻って。

[4] 当研究室の卒業生。W関数のメキシコ版を卒論でやってもらった。現在、大林組。

[5] 当研究室の当時の卒論生。推理小説サークルに所属。現在、東京消防庁。

[6] 論文紹介と言いながら、内容に触れず目次だけをつらつらしゃべっている輩がいる。紹介とは紹介者の解釈と批判眼がなくてはならない。それに
  対するちょっとしたironyである。

[7] 当時、研究室の卒論生であった。

[8] NHKの朝の連続ドラマ(7:30からBS2で、8:15から総合テレビで放送)

[9] 社会学では、レイベリング(labeling)と言う。

[10] 某教授が鉄道マニアだというのはご存じのことであろう。

[11] この年、肩関節脱臼と足首靱帯断裂の2重災害により手術を余儀なくされた。

[12] 未定稿のため投稿に至らなかったものである。

[13] YOismとは、本研究室の初代教授太田裕ismのことである。

[14] 髙井伸雄助手のこと。

[15] 学生・太田洋芳君のこと。

[16] 3人で、北淡町の調査のため、かんぽの宿に泊まったときのこと。

[17] 学生・西田佳未さんのこと。彼女の英語は米国仕込みで凄いらしい。

[18] 我が家の長男・健太郎。当時10歳。

[19] 通算10度目のトルコ出張である。

[20] 悪問題と訳す。問題設定と解答が非線形関係で一筋縄ではいかない。それに対し線型的な単純な問題をwell-problemsと言う。

[21] 金沢医科大学・和籐幸博博士のこと。麻酔科医師であるが、災害医学の世界的研究者。




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