学生からの質問 (2000年10月17日)

学生(1・2年次生)の質問に学生(修士1・2年生)が答えます。
よって、回答の正否は保証の限りではありませんが、プリミティブな質問から学生(修士)の建築へのスタンスが垣間見えるところがおもしろいと思います。
初習学生(1・2年次生)に対する先輩学生のアドバイスもアイロニックでおもしろい。

社会工学入門Ⅰ 建築家の守りの戦略(1) ハード系:建物単体(鉛直力と水平力との闘い)  


35組
回答者:修士1年生(T.H.)

1:現在の建築技術で克服の難しい課題は何か?
機能や快適性を追及すると、コストがかかってしまうことなど。

2:建築と関係ない分野の人は建築とどのように関わっていくのか?また、建築に携わる人は彼らの何を求めるか?
利用したり、発注する上で関わる。
機能性やコストだけでなく空間の良さを感じることを求めている。

3:建物を災害から守る構造はあるのか?
ある。防火設備、耐震構造、耐風構造など。

4:建物を壊した後に、鉄骨はどう処理されるか?
最近は、再利用などが義務付けられている。

5:圧壊と座屈の両方に強い建物はつくれるか?
作れる。構造を分けて考慮すればよい。

6:絶対に壊れない建物は作れるのか? ×3
無理。想定範囲外のことがあると壊れることは必須。

7:日本での建築士と建築家の違いは? ×2
建築士は、建築に携わる行為(管理、施工、設計など)の全般に関わる。建築家は設計を主に担当している人

8:ハードとソフトはどのように違うか? ×3
質問の意味がわからない。

9:建築の就職が悪いというのは本当か?
聞いてくれるな。ホントに悪いんです。現場以外は。

10:大学院までいったらどれだけのことを学べるのか?
自分しだいだが、たいしたことは学べないと思う。社会に出て役に立たないことも多い。所詮は、現実逃避に他ならない。

11:今考えられている以外の外力がかかったら建築は壊れるのか?
その力の大きさに拠るが、壊れることは必須。

12:強くて実用性のある素材の開発は行われているのか?
行われている。『日経アーキテクチャー』という雑誌とかを見ていただければお分かりいただけるだろう。

13:何故、I字鋼は圧縮・引張力の両方に強いか?
判りません。たぶん、計算に裏付けられているのでしょう。

14:S造とSRC造のどちらが外力に強いか?
SRC。

15:壊れる建物と壊れない建物を見分ける方法は?
床にボールを置いて転がるならば、不良施工の可能性がある。

16:人工の化学物質で頑丈な家は作れないのか?
コストと手間を考慮すれば、現実的には不可能

17:建築と土木の違いは?
建築は地上より上のモノを扱い、土木は地上のレベル以下のものを扱う。

18:建築で学ぶ材料と材料化学で学ぶ材料の違いは?
建築は、製品となるものを扱い、材料化学は、その前のマテリアルを取り扱う。

19:建築家が地球環境に出来ることにどんなことがあるか?
省エネ。リサイクル化。

20:人が動くと、それによって建物の重心が変わるが影響は無いのか?
建築物は重いので、ほとんど変化しない。また、人が多く出入りする施設は、相応に頑丈になっている。

21:現在、建築物に行われている耐震手法は一般住宅にも適用できるのか?
スケールメリットが無いので、使えないものが多い。

22:変形して壊れる崩壊と、バキッと壊れる崩壊ではどちらが起こりやすいか?
どんな材料も一気に壊れずに、変形してから壊れます。

23:建築学科を卒業する以外に1級建築士の試験を受ける方法はあるか?
土木学科を出てから2年間実務に従事するか、3年以上働いて2級を取得し、その後2年働けば受験可能。

24:建築物はどのくらいもつか?
最新の公共建築は、100年をめどにしているものが多々あります。

25:東海大地震の対策は万全か?どのように対策されているか?
対策はしているが、万全ではなかろう。避難所の確保、物資の備蓄、避難訓練。

26:日本の気候では、どの材料を用いた建築が一番経済的か?
湿度が高いので、吸湿性がある木であろう。

27:建築を学ぶ人にとって何が必要か?
時代のニーズを把握する先見性。芸術を愛でる心。でも、所詮はサービス業であるという自覚。

28:トンネルがくずれないようにするにはどうすればいいか?
事前の地盤調査

29:ドラえもんの未来都市のような建物を作ることが出来るのか?
形だけは作れる。だが、中身や機能は別である。

30:卒業後の海外で建築を学ぶ利点とその方法
自分を追い込むことが出来る。感性が刺激される。
大学や大使館に問い合わせる。

31:卒業後の進路は?
建築(設計、施工、管理、運営、営業)以外にも、広告代理店や銀行員、高校教師、消防署勤務などがいる。つまり、他分野に行く人もいるんだね。

32:橋梁設計を土木分野で学べるのか?
土木以外は、原則的にムリ。



36組
回答者 修士2年生(H.O.)

1:阪神大震災を始めとして,たくさんの地震が起こっているが,それに対する建物の対策としては,具体的にどのようなものがあるか?
阪神大震災以降特に建物の耐震性の向上がはかられている.現行の建築に対しては耐震補強,新規建築に対しては耐震構造,免震構造を採用して対応している.

2:建物に加わる力が集中する場所はどこか?
建物の構造やバランスの悪さによって違うが,阪神では特に接合部の破壊が問題になっている.

3:地震の際,高層ビルの上層階はゆれるが安全と言うことを聞いたが本当か?
かなりゆっくりとゆれる地震で高層ビルの上階は大きくゆれるが,そこまでゆっくりと揺れる地震は無くそれが超高層を可能にしている理由であり,上層階が安全だと言う所以ではないか.

4:現在鉄筋コンクリートが多く使われているが,木で家を建てることはもう無いのか?
現在も建てられています.

5:先生は何を研究なさっているのか?
地震災害に対する都市防災学です.

6:PC構造と言うのは,鉄筋コンクリート構造の様に、生コンを流し込む方法と比べ強度や性質はどう違うのか?
PC板は工場であらかじめ作るので精度が非常に高いが,壁と壁,床と壁は特殊接着剤,ボルトや金物で固定し接続するため,一体性が低下する.

7:物理学に強くにないと建築士は無理でしょうか?
大丈夫です.それはこれから学びます.

8:地下都市を建設した場合,地震や火山マグマなどの災害には地下で遭わないのか?
地下でもそれぞれの影響は受けます.

9:地震に耐えられるだけの建築技術が低いコストで手にいれることはできるか?
それらの技術を利用する人がさらに増えれば、自然とコストは下がるでしょう.

10:土木方面の防災についてもいろいろとあるが,建築の防災とはどのように違うのか?
土木の防災とは,主に地面又は道路,橋梁に関する災害を扱います.

11:日本でいう建築士は,海外の建築家と建築士が一緒になったものと聞きましたが,それにより生じた差は何か?
建築"工学"が占める割合が増加したといえる.

12:日本では,建築の美術的な面はいつ学べば良いのですか?
美術的な面,それ以外を切り離さずに,いつでも常に学ばなければ行けません.

13:机上の計算や小さな模型で完璧に安心できる設計なのでしょうか?
緻密な計算,十分な実験,経験が,完璧ではないにしろ安心に近づくには必要である.

14:デザイン的なものを学ぶ時,大学で学ぶのと,個人アトリエで学ぶのとではどう違うのか?
個人アトリエは仕事をしながら実践の場で学べる.大学では学生という身分で学べる.

15:地震に対するシミュレーションはどのくらいできるのか?
どのような震源で,その波がどのように伝わり,どのように建物に入力して,都市にどのような被害が現れるのかなど,シミュレーションはできる.

16:超高層ビルなどではどのような地震対策をしているか?
入力の地震動を抑える,ゆれ始めたもののエネルギーを減少させる,地震派による共振振動を起こりにくくする,等.

17:宇宙ステーションにも圧縮,引っ張り力は働いているのか?
内外気圧差から生じる力などが生じているでしょう.

18:ラーメン構造とは?
各接点で剛接合(固定されている接合,わざとずれる様にしてあるピン接合もある)され,一体化している構造体.

19:北大の設計は自分達でしたのですか?
北大マスタープラン,工学部の新棟などは最近の北大建築学科によるものです.

20:最近のデザイン重視のおかしな(転地逆な)建築が目立つが安全性について,安定しているか?
見た目がおかしくても,構造はどのようになっているとは分からないので,一概には言えないでしょう.


37組
回答者:修士1年生(Y.N.)

1:構造上最も強いのはドーム型なのか
構造上最も強いと言うことは一概には言えないが球形は力があらゆる方向へ均等に分散することからドーム型は強度が大きいと言えるであろう

2:建築士と建築家の違い
建築士とは建築士資格試験を受けて合格した1級建築士、2級建築士のことをいう。建築家という資格は存在しないが、world wideな活動をしている建築家で一般的に有名な人物のことを周囲のものがこう呼んでいるようだ。

3:今後の建築における新技術の実現はあるのか
発展はし続けると思います

4:建物の形態は時代と共にどのように変化してきたのか
日本についてか世界についてかはわかりませんが建築の変遷については
図書館にいって新建築などのバックナンバーを見てみたらよいのでしょうか。
ラスコーの壁画 ジッグラット ピラミッド ギリシャ・ローマ神殿 ルネッサンス
アールデコ ・・・・興味のある方は建築史図集を見るとよいのでは。 

5:今研究中の新しい材料はあるのか
現存する素材を利用した新たな材料は現れるかもしれません 
研究は進んでいると思われます

6:コンクリートと鉄筋コンクリートの違い
コンクリートとはセメント・水・骨材さらに必要に応じて混和材料を適当な割合に調合して練りまぜたものでこれは脆性材料である。鉄筋コンクリートとはこの脆性材料であるコンクリートを靭性材料である鉄筋で補強した構造材料のこと。

7:なぜ四角形よりも三角形のほうが構造的に安定しているのか
下図のように対角線上に梁を入れるだけで水平荷重に耐えうるようになる



                              











8:東海地震は近々起こるのか
地震空白域ではある

9:ラーメン構造とケーブル構造、トラス構造とは
ラーメン構造:各接点で部材が剛に接合されている骨組み,力学的には曲げ材・圧縮材・引っ張り材が結合されている形式
ケーブル構造:細い鋼線を束ねたり撚り合わせたりしてつくる鋼束線,引っ張り強度が強いので吊構造に多く使われる
トラス構造 :部材が三角形を単位とした構造骨組みの一つ,部材の接点がすべてピン接合となっている

10:ノース33ビルは耐震性に優れているのか
ホンとですか?

11:コンクリートよりも強い建材は
SRC 鉄骨鉄筋コンクリート

12:建物は風と共鳴するのか/そういった計算は成されるのか
共振します 計算も成されてます。

13:構造やデザイン関係の仕事に携わるにはどうしたらよいか
まずは建築学科に行くこと(北大の場合)、その後の講座分属で構造分野にするかそれとも意匠分野にするかを決めるとよいのでは。いずれにしても意欲があればどんな仕事に携わることもできると思います

14:木造の耐久性は
20年から30年だそうです

15:圧縮引っ張り両方に強い新素材は発見されうるのか
今のところ鉄筋コンクリートで両方に対応している

16:建築士になるため今からとることのできる資格はあるか
インテリアコーディネーターは25歳にならないと受けられませんが、カラーコーディネーターのほうは受けられるのではないでしょうか。しかしどれも建築士になるためにと言うよりは建築士プラスアルファの部分だと思います.

17:芸術性と安全性は相反するものなのか
Case by caseですね・・・

18:なぜ高層建築ができたのか
高さへの挑戦と技術の競争と地価の高騰 

19:よい建物を作るのに必要な条件とは
建物への愛情です!!

20:昔の建物はよく残っているのに今の建物はすぐ壊れるのはなぜ
全体としてみれば、今の建物のほうが昔の建物よりも強いと思われますが、今残っている昔の建物というのは、昔の建物の中でとりわけ強い建物でしょう
すぐに壊れる今の建物は建て方に問題があるのでは・・・

21:材木の供給は間に合っているのか
最近は再利用などをして有効利用をしていると思われます(集成材とか)

22:外力からの守りとしての機能とときにその外力により凶器と化す
建物の矛盾をどう捕らえたらよいのか


38組
回答者:修士1年生(Y.K.)

構造
1:「日本の住宅の寿命が欧米の住宅より短いのはどうしてか。」(2)
A:気候の問題、素材の問題

2:「自然を壊さずに建物を建てることはできないのか」
A:できません。

3:「安全対策は理学的、工学的な見地だけで十分なのか、危険をもたらす他の要因はないのか。」


4:「建物の形や材料(木造、鉄筋)によって地震や台風に対する強度はどのように違うか」

5:「地震に強い家の研究はどこまで進歩しているか」「阪神大地震級の大地震に耐えるようないえの構造はあるか」「現在一番構造の強い建物は何か(具体的に)」

6:「雪のあるなしで構造に違いはあるか」

7:「地震発生時、高層ビルは揺れによって力を吸収するという、それはどのような構造によるものか」

8:「どのような種類の構造があり、それぞれにどんな力が掛かっているのか」

9:「垂直力、水平力に耐える構造として現在研究されている新たな構造はないのか」

10:「建物にかかる張力について具体的にどのようにかかるのか」

材料
11:「現在使われている材料の中であらゆる面から見て一番よいと思われるものは何か」
A:鉄、ガラス、コンクリート

12:「コンクリートの老朽化対策や補修技術にはどんなものがあるか」

13:「湿気に弱い木材に対してどのような工夫がなされているのか」

14:「近年建築において注目されている材料にはどのようなものがあるか(アルファゲルなど)」「新しい素材の開発はなされているのか」

15:「木造とコンクリートの耐久性はどのくらい違うか」

講義
16:「ソフトとハードの境目は何を基準にして区切られているのだろうか」
A:パソコンをイメージするといいでしょう。

17:「今回のテーマは『建築家の守りの戦術』だったが、『攻めの戦術』があるとすればそれはどのようなものか」

北大
18:「北大出身の建築家で有名な人物はいるか」

19:「北大ではCivil Engineer とArchitect、どちらの分野を重視しているか」

将来
20:「今度人口が縮小したら建築関係の仕事で生計をたてていけるのか、ゼネコンは倒産が続いていくのか」

21:「今後も木材住宅は存在し続けることができるのか」

22:「これからの建築に求められていくものは何か」

23:「土木でも建築とにたような仕事ができるのか」(3)


再履修組
回答者:修士1年生(N.K.)

1:外国の大学では,建築と土木の両分野の学問をどのように講義しているのですか.×1
→西欧の大学では,建築学科は芸術学部に所属する場合が多く,そこでは建築デザインに関する研究・教育が行われています.一方,建築構造学や土木学はシビル・エンジニアリングと呼ばれ,工学部に属します.日本においては建築デザインと建築構造学を合わせて建築工学科として,工学部に所属している場合が多いです.

2:これまでに予想しえなかった災害(阪神大震災など)に対して,どのようなアプローチでコンピューティングし,災害予想やその対応策をたてるのかを聞きたい.×1
→地震災害の場合,まず過去の資料に基づいて地震の起こる場所や規模などを予測します.それからそれらの地震について,過去の災害と現在の状態から起こりうる被害を予測して,その被害を最小にするための対応策がたてられます.

3:現在東京に大震災がきたら,どの程度の被害がでるか?×1
→震源の位置や,震災時の自然条件次第では,阪神大震災に相当するあるいはそれ以上の被害がおこると予測する人もいます.

4:建物を作るとき,どれくらい安全マージンをとって作るのですか?×1
→日本では,建物の構造的な強さは法律により,地震時に建物が倒壊しないように定められています.最近の基準では震度3~4の地震では損傷しないように,震度6~7の大地震が来ても完全に倒壊することがないように,建物に余力を持たせて設計するように定められています.



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