2008年度版 デザイン物性学講義テキストダウンロードサイト

講義中に使用したパワーポイントを抜粋し、PDFファイルでアップしておきます。
PDFによる講義資料の配付は終了しました。


第2講 構造の役割
2008/4/14
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第3講 構造形態と構造形式
2008/4/21
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学生からの質問とそれへの回答を以下に載せておきます。学習の参考にして下さい。

Q1:日干しレンガを使った家が未だ存続しているので、それらに住む人々が、よりよい暮らしができ、現状のメソッドを生かすことができる素材を見つけられたらよいと思った(さあ)。
A1:日干し煉瓦(アドベ)の利点は安価であること・材料がすぐに手に入ること・特別な技術を必要としないこと・廃棄しても土に戻ることでしょうか。一言で言うと「手軽さ」。それ以外の性能的な利点は断熱性。いまだに現地で使われているのは、性能的な利点よりもこの手軽さにあるのでしょう。そこに焦点を当ててしまうと、このような素材をほかに見つけるのは難しいですね。アドベに関しては非耐震性が最大の弱点です。むしろ、ここは住民の意識改革(価値観の転換)教育が必要なのではないかと思っています。とは言うものの、住民にとり手軽さは最大のメリットでしょうか。難しい問題ですね。

Q2:日本に耐震構造の勉強にきている外国の建築業者けっこういるのでしょうか?日本は地震にくわしい国だと思うのですが(かこ)。
A2:日本の建築業界は、かなり閉鎖的です。外国企業が参画しにくい体制が数多く存在しています。ひとつは受注時の指名入札制度(やりすぎると談合や天下り問題に発展)。また、使用材料や工法において日本独自の種々の規定があります。それらは日本国民の安全の観点(特に火災・延焼を防ぐため)には必要な規制も多く含んでいますが、外国企業を入りにくくしている一面もあります。それを解消するための規制緩和が進みつつあるのは事実ですが、最近は、外国~特に米国~からの圧力により必要な規制まではずしているという新たな問題が発生してきています。外国企業が入りにくい技術的な問題として、日本は地震国であるという事情もあります。高度な耐震技術が必要とされるからです。外国の業者が勉強にきているというよりも、これから建築業界で活躍を期待される若い学生が留学し、そのまま日本の建築業界に就職して技術を身につけていくという事例は多いです。

Q3:もう少しメモをする時間がほしいです(とれ)。
A3:なるべくゆっくりと話をするようにしましょう。しかし、そうなると、睡眠効果が促進されますね。板書をするのが一番良い方法だと思いますが、こっちの体力が持たない・・・。
メモし損なったところは、PPTをアップしますので、そちらで補って下さい。
また、分からない点やメモしたいところがあったら、授業中に発言して下さい。

Q4:スライドをアップしてくれるのが有り難いです。説明もわかりやすいです(さけ)。
A4:ありがとう。そう言ってくれると、張り合いを感じます。

Q5:・・・(やか)。
A5:・・・。

Q6:特になし(たか)。
A6:・・・。

Q7:組積造にはどのような耐震の工夫ができるのでしょうか(すふ)?
A7:コンクリートブロックなどの成型組積は、穴をあけて鉄筋を通すことにより、引張力や曲げに抵抗する構造が可能です。問題は、荒石やアドベのような無補強組積造ですね。素材どおしの接着力を大きくするために、荷造り用ゴムバンドで家を縛るというアイディアを出した先生がいます。一つの方法ではありますが、社会に受け入れられるかどうか大きな問題です。社会が受け入れること、これが耐震社会を作り出す要点になります。

Q8:アーチが圧縮力のみで支えられていることを初めて知った(にゆ)。
A8:初めて知ってどうでしたか。抵抗できる力が規定される形というのがあるのだということ、その形状を利用した構造システムは無理無駄のない美しいものであるということ、しかも、多少形状が崩れてもかなり安定した強さを発揮できるということ、これに気づき利用する人類の英知に感動しませんか。

Q9:アーチ構造の橋は、その上を人が通ったりして荷重が均一でないのに、どうして支えられるのか(ふこ)?
A9:橋の重量(鉛直荷重)に対して、人の荷重が無視できるくらいに小さいからでしょう。人ではなく、重量が無視できない象や戦車が通ったら、圧力線は断面を外れ、支えられないでしょうね。

Q10:組積構造崩壊の理由とアーチ構造のしくみが面白かった(たゆ)。
A11:感覚的にも分かりやすい話ですしね。

Q12:デザイン系は、10:30に学校にこれない人が多いです。ごめんなさい(すた)。
A12:どうしてデザイン系の学生は来られないのですか?理由があるのであれば、対応を考えましょう。

Q13:実際、現在建設されている超高層ビルは壊すときどうやるつもりなのでしょうか(ひみ)?
A13:建築素材の材料特性に絡んだ話ですね。壊し方でしょうか?廃棄物処理の問題でしょうか?超高層は鉄骨のパネル構法が多いので、建設と逆プロセスでばらしていくのでしょう。RC系は爆破でしょうか。どちらにしても大きな問題ですね。


第4講 力(合成と分解)
2008/5/12

ようやく数値計算の始まりです。電卓を持参してください。
今回は、偶力や平行な2力のモーメントの求め方に質問が集中しました。
理解が十分でない学生もいるようなので、次回に補足説明をします。
関連して、際立った質問が寄せられたので、回答しておきます。

Q1:平行な2力のモーメントを求めるときは、合力P上に定義点をもってきて、つり合いで求めたらダメですか(ひみ)?
A1:いいところに気が付きましたね。定義点はどこに設定しても構いません。合力上に設定すると、合力は定義点に対してモーメントは発生しませんのでモーメントのつり合い式は簡単になります。

Q2:例題2や演習1(2)は(平行な2力の合力を求める問題)、比で考えていいでしょうか(たあ)?
A2:これも鋭い質問ですね。距離の比が力の比で与えられることを、次回説明しましょう。

Q3:バリニオンさんについて知りたいです(たれ)。
A3:合成モーメントを求めるときにバリニオンの定理を証明しましたが、それに興味を持ったのでしょうか。バリニオンが何かを考えたことがなかったので、あわてて調べてみました。確かに、人名でした。フランスの数学者です。以下のサイトに彼の経歴(写真付き)が載っていますので参考にしてください。
http://www-groups.dcs.st-and.ac.uk/~history/Biographies/Varignon.html


第5講 合力の図式解法(力のつり合い)
2008/5/19
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本日は、デザイン製作の締めきりと重なったためか、出席率が低かったですね。今日のテーマは、前回の続きで、力を合成したり分解したりすることができることの、物理学的背景と、解法の説明でした。基本的なことですが、理解は積み重ねですので、シッカリと復習しておいてください。今日欠席した学生は、友達から宿題の説明を聞いておいてください。



Q1:今まで数式解法で公式だと思って覚えてやっていたが、仕組みを図式解法で納得できました。でもなかなかややこしかったです。慣れでしょうか(たひ)?
A1:公式には仕組みというか、物理学が背景にあります。それを理解しなければ、ただ覚えても使えません。仕組みが理解できたということは、大きな前進ですね。図式解法の原理は難しくありません。慣れというよりも、原理を押さえることによりややこしさも払拭できるでしょう。

Q2:今までつり合いも合力も同じようなものだとあいまいだったが違いが分かってよかった。連力図で求めるより、数式解法の方が楽な気がするけど、連力図で求めるメリットはありますか(おこ)?
A2:言葉の定義というものは、細かなことにこだわり、ある意味退屈なものですが、そこの理解があいまいなままに先に進むと、後々で混乱する元凶となりますので、シッカリと押さえておく必要があります。定義は大事であると同時に、新たな概念の仕込みに通じますので結構奥が深くて面白いものです。
 連力図のメリットですか。確かに、連力図は必要ないという先生もいます。一つは、未だに公務員試験や技術者試験に出るということ。でも、これはあまり積極的に学修する意味づけとはなりません。Q1の回答にもありますが、図式解法を理解することで、力の作用を物理学的に把握することが容易になります。また、数式のみに頼っていると、計算間違いに気づかず、大きな設計ミスに繋がることがあります。解法を複数身につけておくことで間違い発見がし易くなるという強みと同時に、感覚的に力の作用を理解する力が身に付くということが、メリットでしょうか。

Q3:図式解法と数式解法を両方うまく使って解けたらいいと思った。どちらかの解法に片寄りがちなので。
A3:そのとおりですね。Q2の回答も参考にしてください。

Q4:1年生の時の構造力学では合力をとしたのですが、この記号はどのようでもいいのでしょうか(たれ)。
A4:ベクトルの表記に関する質問ですね。矢印を頭に付けてベクトルを表記するのは、高校までではないでしょうか。一般には、大学以上ではベクトルはゴシック斜体で表します。表記法も定義の一つです。美しい表記法は音楽家(五線音符の美しさは芸術ものですね)同様に、数学者もこだわりがあるようです。でも、表記法で訳が分からなくなってしまうのはもったいないですね。勉強しましょう。

Q5:示力図と極射図からu、v方向の分力を求めるのが、いまいちわからなかったです(やか)。
極射線のところがいまいちわからなかった(たか)。
A5:次回の演習問題の解答で再度説明しましょう。どこが分からないのかも、質問してくださいね。

Q6:演習の解はサイトにアップしてくれますか(ふあ)?
A6:解答をアップしてしまうと、次年度以降、演習として使えなくなってしまいますね(笑)。授業中に解答していますので、それでダメですか。

Q7:授業を欠席しすぎるとテストよくても単位もらえないんですか(なゆ)?
A7:授業は学生の理解を助けるために行っているものです。既に理解していれば、授業に出る必要はありません(確か、最初のガイダンスの時にその説明をしたと思います)。しかし、授業に出席しないでテストの成績も合格点に達していなければ、その学生は理解が足りない上に努力もしていないと、評価せざるを得ません。授業の時の学生の努力姿勢も私は単位評価に加味していますので、演習の解答や質問票で自己アピールするよう努力してください。

Q8:名古屋で先生にとって一番構造的にすばらしいと思う建築は何ですか?
A8:一番は何かと聞かれると、答えるのは難しいですね。構造的にというのではなく、デザイナーの無理な要求にできるだけ応えようとした構造屋のプロ魂に敬意を表して、スパイラルタワーズとしておきましょう。

2008/5/26
今日は、静定・不静定構造物の説明をし、構造力学に本格突入と思って勇んでいったのだが、デザイン製作提出30分前ということで、出席者が6人しかいなかった。
先週の力のつり合いと今週の静定・不静定を聞き逃すと、その後の講義がきつくなるので、今週は休講措置をとります。
前回の講義に使ったPPTをpdfでアップしておきました。

次週は、出張のため、休講。2週連続の休講となります。


2008/6/9
久しぶりでした。しかし欠席者が多くなってきましたね。分かり切った話ばかりなので、聞くに堪えないのかと心配したのですが、演習問題をやってみると、意外と分かっていないですね。シッカリと復習しておいてください。

Q1:連力図を描く手順は分かったけど、なぜこのようになるのかいまいち分からない(ふあ)。連力図がよく分からなかったです(さけ)。
A1:連力図の仕組みについては、前回(第5講)で、図を使って説明したのですが、忘れてしまったかも知れませんね。講義のPPTをアップしてありますので、それで確認してください。要点のみ以下に記載しておきます。
 連力図の仕組みは、「合力は分力が交差する点を必ず通る」という原理を利用した作図法です。力を平行移動させ示力図を求めると、分力1の始点と分力Nの終点を結んだ合力が求まります。示力図に任意の極点を設定し、曲斜線を引くと、今度はこれが分力になります。示力図の分力を元の力の作用図に平行移動させ、元の力が曲斜線(分力)の合力となっていることを利用し、「合力は分力が交差する点を必ず通る」という同様の原理で、交差点を求めていくと、連力図は閉じて合力の作用線が求まります。
 では、力はなぜ平行移動できるかという疑問が残っているはずです。これについても、前回の講義で説明しました。粒子mに働く力を座標変換し平行移動させても粒子mに働く力は同じであることを証明しました。すなわち、力は平行移動しても物理法則に影響を与えないのです。よって、力はベクトル演算(交換法則、結合法則が成立する)が可能なのです。

Q2:静定次数判別式はよく忘れるので、次回のうちに頑張って覚えたいです(さあ)。
A2:式で判別することも重要ですが、静定と不静定の構造力学的意味の違いを理解してください。


第6講 2008/6/16 構造物の安定と不安定
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静定構造物と不静定構造物を判別できるだけでは不十分です。静定と不静定のメリット・デメリットを理解し、設計に生かしてください。

Q1:仕組みの説明をした後、すぐに例題を解くのは分かりやすく頭にはいるのでとてもありがたいです(たひ)。
A1:理解を確実にするために、演習問題を解くのは非常に効果的です。自力で解いてみてください。

Q2:実際の構造物にもピンやローラーなど使われていますか(こじ)。
橋梁にはまさしくピンやローラーそのものが使われているものがあります。建物では接合部の形だけではピンなのか剛接合なのか判断しにくい場合があります。接合部にモーメントを伝える程度の強度がなければピン接合の扱いとなります。

Q3:不安定なとき、どこに部材を追加すると安定になるかという感じの問題があったのですが、あまりよくわからなかったので教えて頂きたいです(さあ)。
A3:具体的に問題を見せてください。安定か不安定かは判別式で判断できますが、骨組みを見て感覚的に判断できるようになってください。

Q4:耐震構造の建物は不静定構造物なのですか(ふあ)。
A4:そうですね。建築物は一般に不静定につくります。どうしてでしょうか。では静定構造物はどのようなところに採用されているでしょうか。


第7講 静定構造物の反力
2008/6/23
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反力を求めることは、この後の部材応力を求めるための基本作業となります。演習問題を自力で解き、確実に理解しておいてください。

Q1:先々週の授業を休んだため、演習が全く分からなかったのですが、理解できたので安心しました。授業は出ないとダメだと実感しました(かけ)。
1年の時やった構造デザインと同じなので、ノートを見直して復習したいと思う(ふこ)。
A1:デザインプログラムの受講生は構造系の授業選択があまりないので、構造力学の基本を復習しています。同じことの繰り返しだと、甘く見ないでください。構造を公式として覚えないで、物理学として原理を理解してください。ものごとのしくみがわかると言うことは楽しいことだと思いませんか。建築以外のデザインにもいつか応用するときがあると思います。

Q2:4個のピンで囲まれた空間は不安定ですが、たとえば、5個のピンで囲まれた場合も不安定なのでしょうか(さけ)。
A2:三角形は安定な空間ですが、多角形はすじかいのような斜め材がなければ、不安定な空間となります。これも、感覚的に分かるでしょう。

Q3:○次不静定が具体的にイメージできないのですが、できるようになりたいです(さあ)。
A3:不静定次数は、構造の余裕度です。剛節点をピン節点にするとモーメントを負担できなくなるので次数は1減ります。さらにローラー支点に変更すれば、剪断力も負担できなくなるので次数はさらに1つ減ります。部材を切断すると、軸力と剪断力とモーメントが伝わらなくなるので次数は3減ります。このように構造物から余裕度を減らしていき、それ以上減らしたら不安定になるという状態が静定です。イメージできませんか?

Q4:奥行き方向については考えないのはなぜですか(こじ)。
A4:本来、3次元で考えるべきですが、複雑な骨組みでない限り、骨組みの変形が小さいときは各平面を独立に考えても問題はありません。そのほうが、計算が簡単ですし。


第8講 静定構造物の応力
2008/7/7
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骨組みの応力を求めるところにやっと辿り着きました。これまでやってきたことの総合問題です。応力を求めたいところで骨組みを仮想的に切断し、その節断面において左自由体(あるいは右自由体)の力のつり合い式を3本立て、3つの未知変数(軸方向力、剪断力、曲げモーメント)を求めればよいわけです。そのときに左側と右側で応力を求めると、大きさは同じで符号が逆転していることが分かります。すなわち、切断面においても力がつり合っているということの証明です。このように、どちらから骨組みを解いていってもよいのですが、なるべく外力(反力)の少ないところを狙って解くのが簡単に解くコツです。

Q1:応力を仮定するときに向きの設定がイメージしにくいです(ふあ)。
A1:向きは仮定するのですから、どちらを向いていても構いません。つり合い式を解いた結果、マイナスになれば、設定した向きが反対だったということだけです。向きを設定するには2つの考え方があります。1つは、機械的にいつも仮定する向きを同じにするという考え方。たとえば、軸方向力は引張・剪断力は時計回り方向にズレ留用に設定・曲げモーメントは時計回りという具合です。仮定するときに雑念が入らず計算が機械的なほうがいいという人向きです。もう一つは、感覚的に切断面における力の向きが分かる人は、正しい向きで仮定することです。そのほうが、符号が逆転することなく、次の計算ステップに移行することができます。こちらは符号の間違いが少なくていいのですが、感覚的に力の方向を理解できる能力が必要です(ま、慣れですが)。

Q2:積分を殆ど覚えていないので、課題終了後にまた勉強し直そうと思います(すふ)。
A2:微積分は、計算途中でも出てきますが、重要なのは、微積分の考え方を導入することで、いろいろな考え方の概念が掴みやすくなると言うことです。微分は元の数式の微係数(傾き)を与えるということぐらいは、理解しておきましょう。

Q3:問題の解答を聞いていて、モーメント図の描き方(+、-)が微妙にわかりませんでした(やか)。
A3:モーメント図の±はあまり重要ではありません。骨組みの材料を意識し、引張側にモーメント図を書くのが定型です。また一般的には、梁の場合、下端が引っ張られる(下に凸状態、あるいは上に凹状態)のが+、上端が引っ張られる(上に凸状態)のが-です。

演習問題の解答


第9講 断面の性質
2008/7/14
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最終講義でしたが、デザイン設計の発表会のため、やむなく休講とします。前回の演習問題の解答と今回の講義内容についてアップしておきますので、自習しておくように。PDFの2枚目に概念の整理というスライドがあります。違いがきっちりと説明できますか。
今年度初めて開講した講義のため、講義速度が掴めず、全体計画の2/3程度しか終えることができませんでした。少し時間をかけすぎたところもありましたが、基本でつまずくと、その後が苦しくなるので概念の説明に時間を割いたことはよかったかなと思っています。皆さんはどうだったでしょうか。

期末試験を以下の要領で実施します。
■日時:7月28日(月)10:30~12:00(途中退場可)
■場所:24号館A1教室
■対象者:平成20年度デザイン物性学履修者
■参考書・ノートの持ち込み禁止
■電卓・定規を持参のこと

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