講義ニュース(3)  2001年度

■メールでの質問・回答
■講義第2ラウンドについて


(1)メールでの質問・回答
 メールで質問が入りました。他の学生も講義中にできなかった質問はメールでどんどんするように。
名前を伏せたかったなら、ハンドル名でも構いません。質問数が多くなってきたら(望むところですが)、その回答を学生に振るかも知れませんが。

>空間形態学分野 M1 おのです。
>都市防災学特論に関する質問です。
>講義全体に関してなのですが、今まで災害に対する様々な
>対策についての話が出てきました。それらを聞いていて漠然
>と思ったのですが、どれもいわゆる「マニュアル」的な感じ
>がします。事前対策を考えている以上仕方のないことなので
>しょうが、災害になると大抵予想外のことが起きて「今まで
>の準備が役に立たなかった」となることもあると思います。
>研究者の人たちの間で、その場での臨機応変な対応に関して
>議論されることはあるのでしょうか。教えてください


回答:
建築都市学科の学生には、学部の講義で「災害の性格」という話しをしたと思うのですが、覚えていますか。
その講義の主題は、「災害の本質は何かを考えよう。災害に向き合う君のポリシーを見つけよう」です。

災害は様々な特徴を持っています。それを一言キャッチフレーズで表現してみてください。
講義では、「異常性と意外性」「偶然性と集中性」「局地性と多発性」「歴史性と免疫性」そして究極のキャッチフレーズ、「不平等性」について説明しました。災害の一つの特徴に、「弱点狙い」があると思います。一番弱いところをついてくる。対策のないところを狙ってくる。大谷君の質問中にある「今までの準備が役に立たなかった」のは、そこを言い当てたキャッチコピーでしょう。

だから防災は難しく、またやりがいのあるところでもあるのです。どこまで災害を予想できるかは人間の想像力の勝負なのですが、今般、世のお役人は防災行政にまで前例主義を持ち込んでいました。今までの災害経験でしか防災を考えない主義を通してきました。行政とはすべからく予算配分です。前例を越える予算を獲得する理論的根拠が人間の想像力、このような理屈が役人の世界で通じるわけがない。よって前例主義。これで失敗しても誰も責任を取る必要がないからです。その結果が、阪神淡路大震災なのです。

前例主義ではいけないという考え方が、漸く芽生えてきました。シナリオ型地震防災対策はその先鞭です。しかしそのシナリオもまだ、前例に大きく引きずられています。

質問にあった「臨機応変の対応」を難しくさせている大きな原因の一つは、情報不足にあると思われます。災害時には情報が入ってきません。何が起こったのか、確かな情報がなければ何一つ意思決定できません。兵庫県南部地震で、当時の村山内閣が、数時間何も指令を出せなかったのは情報不足が大きな要因だったと思います。その情報不足を少しでも補完しようという考え方が出てきています。リアルタイム地震学という分野です。地震発生時に、その揺れの情報のみで被災状況をコンピュータで計算し、意思決定のための第一次情報として意思決定者に通達するシステムです。他にも、取得災害情報を事前確率として与え、ベイズ統計により予測値を早期に収束させる統計的情報収集法も提案されてきています。臨機応変のキーワードは「情報」です。


(2)講義第2ラウンドについて
 本日の講義の最後でいいましたが、各グループごとに与えた分担課題を発表する時間を取ることができません。そこで、発表に替えて、レポートをpdfファイルで提出してください。各人に配布し、それを材料にメールで議論しましょう。お忘れかも知れません。グループ分けをしたときのメールを以下に再掲します。

・調査課題
Aグループ:民間企業の防災
Bグループ:地下街の防災
Cグループ:大学キャンパスの防災
Dグループ:高齢過疎化地域の防災
Eグループ:歴史的街並み保存地区の防災

※それぞれの組織のリーダーは防災に関しても、多くの意思決定をせねばならない。組織により考えねばならない防災関連事項が異なるはずである。災害時に部内者・部外者に対する安全の配慮の仕方は組織により当然異なる。また、その組織の社会的使命も災害時と平常時では異なることもあり得る。リーダーは多種多様なケースを想定し、対策を講じる(意思決定を下す)必要がある。上記のそれぞれの調査課題に対し、自らが意思決定者と想定し、シナリオを作成してみよ。

シナリオ1:想定被害シナリオ(想定被害は原則地震とする。他の条件は自由。グループ内で決定せよ)
シナリオ2:組織としての対応シナリオ(危機管理シナリオ)
シナリオ3:その対応がうまく機能しない場合はどのようなときか。その場合の、2次的被害発生・被害拡大シナリオ
シナリオ4:そのような危機的状況における、バックアップ体制のあり方等々をグループ内で議論し、pdfファイルで提出する。

刺激的なレポートを期待しています。


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