学生からの質問

講義の最終日に質問をメールで寄せてもらいました。簡単な回答を付しますので、参考にしてください。ご意見のある方はこちらまで。

くゆ君
日本における危機管理の実態。
日本においてはどのような機関が危機管理に携わり、どのような活動をしているのか。また、危機管理に関する政府と研究者と市民との間の関係、情報伝達の手段などをもっと詳しく知りたかった。
Okd>色々なレベルでの危機管理があるので、一言ではとても説明はできませんが。
わが国での広域的危機管理体制としては、1995年阪神淡路大震災の初動体制の遅れを教訓として、内閣官房の組織内に内閣危機管理監を設置し、内閣全体としての緊急事態対処の改善を試みています。しかし残念ながら、米国FEMAのような住民レベルから国レベルまで統轄する組織はまだ日本にはありません。自主防災組織とか都市マスタープランなど、官と民の協働による危機管理・まちづくりがないわけではありませんが、本来あるべき協働とは大きく離れています。官-民のつながりが極めて弱いのは日本の不幸と言わざるを得ません。お互いにその重要性についての認識が希薄なためでしょう。初等教育の段階で、危機管理に関する官の役割・民の役割・そしてその協働について国民全員が学ぶべきだと思います。そのようなボトムアップを図らなければ、「日本の災害はいつまでたっても天災」の域を脱せないのだと思います。

また、これは7講の学生からの情報で、岡田先生達が家具の安全性(地震発生時における)をシュミレートするソフトを開発したという話を聞いたのですが、そのようなことに関する話も聞きたかった。
Okd>これはわが家の危機管理プログラムです。関連の論文をお読み下さい。


かま君
全体を通して、財政や金融関係のことがよくわかっていません。これは、もともとこの分野に対する自分の理解が低いためなので、少し自分で勉強して理解を深めたいと思います。
Okd>今回もちいたカリフォルニア州地震安全委員会のツールキットは、危機管理に関する意思決定を経済軸から判断する格好のテキストであったと思います。複雑な事象をこれだけ単純化してマニュアル化したのですから、わかりやすさにおいては群を抜いたものだと思います。しかし単純化しすぎている嫌いがあるので、たとえば、井上裕著:まちづくりの経済学(学芸出版社)などで補強する必要はあると思います。

こか君
日本で今どのような動きがあるのかもっと詳しく知ることが出来ればと思いました。
・制度の面、制度化の動きの有無
・人材は今どのくらいいて、どのような場所で働いているのか?
Okd>質問の対象ををもう少し絞ってください。これだけでは答えにくい。


すこ君
日本でもそれぞれの企業が独自の防災計画のようなものを作っていますが、日本と欧米諸国のシステムの違いにおいて、最も大きな違いはなんであるのか?
何故それが日本では取り入れられないのか?
Okd>それぞれの企業内の危機管理システムについては、私もよく分かりません。巧拙種々あると思います。自治体の体質を企業に当てはめるわけには行かないのですが、計画の巧拙は危機意識の強さの問題です。拙の代表は、とりあえず雛型となる防災計画書なるものを収集する→固有名詞対照表を作る→文書の入れ替えをする。この程度のことでもそれなりの防災計画書はできあがってしまいます。自らの災害シナリオを持たない自治体(企業)は拙なる計画の代表です。


わし君
今回はアメリカのツールキットを使っていたため、日本でのマニュアルがどの様になっているのかが
いまいちピンと来ませんでした。
またリスクマネージャーやファイナンシャルマネージャーなど有りましたが、実態がわからないのでこれらの係わり合いや実状が疑問に残りました。

おの君
地震リスクマネージメントの重要性が社会的にほとんど理解されていないこと。地震の対策といえば、たいていの人は避難訓練や非常食くらいしか思い浮かばないと思う。これは、その中心になっていくべき自治体の認識が未だに甘いからなのか?市民の側が無関心なのがいけないのか。
Okd>くゆ君の質問への回答を参照下さい。


たかさん
結局どのような防災システムがベストなのかということ。
防災のあり方は、時代や人と供に変わって行くことだと思うので、今後考え続けなければならないことだと思う。

すま君
ツールキットの中での費用便益分析の用い方が良く理解できなかった。
Okd>勉強してください。


よささん
日本の各自治体に、まだ危機管理マニュアルがないということだが、おそらくいくつかの自治体ではマニュアル作りが動き出していると思うのですが、それがどの程度の進捗状況なのか。また、いつ完成予定なのか。できあがったあと、どの程度職員や住民が把握することになるのか。実際に活用できるレベルまでの認識をもたせるのにはどうすればいいのか。
Okd>自治体は防災計画書を作りそれを適宜見直すことが、災害対策基本法で義務づけられているのです。よささんが言う自治体の危機管理マニュアルというのはどのようなものを指しているのでしょうか。


たな君
解らなかったことは、なぜに、地震国でありながら、いつも模範は米国なのか?ということです。 
Okd>いつも米国がお手本ということでもありません。米国も日本をお手本にしています。むしろ、防災に関してはアイディアは日本の方から発信しているのです。古くは、強震観測の勧め(末広恭二)に従って、米国は強震計を1932年に開発設置しましたし(日本はそれから遅れること20年、SMAC型強震計の開発となります)、カリフォルニア州における震度の直後通達CUBEシステムも同様のことは日本の気象庁が既にやっていたことですし、リアルタイム地震学も1980年代に日本で既に試行されていました。違いは、米国はこれだと思ったことは、即、実行することです。しかも全国規模で。この実行力の違いが防災力の違いに直結しています。


たと君
分からない点というわけではないのですが、アメリカでは国が災害を含めた総合的な危機を管理するFEMAのような組織が存在していますが、日本では、どうなのかというのが疑問ではあります。日本における災害の数、被害、FEMAでの効果を考えると日本でもあった方がいいと思うのですが、その点はどうなんだろうというのは、調べていて感じた疑問です。
Okd>くゆ君の質問への回答を参照下さい。


かも君
最近興味のあることとして、自分の住むこの日本の経済基盤というものが主に開発途上国のエネルギーに依存しているのではないかと考えるようになり、これから持続可能な都市を考えていくに当たり、様々な面でグローバルな視点を持つことが大切だろうと日ごろ思っていました。
阪神大震災のときに建設された仮設住宅が解体されたあと、トルコの大地震の際に輸出され、日本の仮設住宅はトルコの仮設住宅よりも圧倒的に品質がよく、入居者の間で不平等が生じてしまうという恐れがあり、一部の特権階級の仮設住宅にしか使われなかったという話を聞きました。このように同じ「地震」という災害でも、国によって異なる対応が必要なのではないだろうかと思いました。この講義の趣旨からは外れてしまうかもしれないですが、アメリカや日本のような先進国での防災に対する取り組みを見た上で、トルコやペルーなど経済状況や国民の意識も異なる国では災害時の危機管理・意思決定のマニュアルは存在するのか、もし存在しないのなら先進国がリーダーシップを取り意思決定を行っているのかという点に興味がありました。

てた君
実際にこれまで起こった大きな地震についてのことが、講義の中でいくつも紹介されましたが、どれも同じように感じてしまい、理解というか頭の中に入れることができなかったです。もっと興味をもって調べていく必要があると思いました。

なご君
土木工学科出身であるため構造物に関する専門用語がいまいち分からなかった。
実際に地震が発生した後の被災者に対するケアがどのように行われているのかについて。
Okd>ケアにも色々な種類があります。緊急物資支援から経済的支援、精神的ケアなど。物資の相互支援、義援金・公的資金援助に関する研究は私のところでも行っていますので、興味があれば来てください。被災者へのケアに関する報告・論文はたくさんありますが、デビッド・ロモ著:災害と心のケア(アスク・ヒューマン・ケア発行)をお勧めします。


まの君
3章の補足説明で調べた「札幌市における危険度評価」の中で、出火件数の算出の式
(Y=α・P・N)があったが、そのパラメータの1つに「時刻係数」(α)がなぜ入っている
のか?出火件数の算出になぜ時刻係数が関係してきているのかが分りませんでした。
Okd>火源と着火物がないと出火しません。夕食準備時間帯は火を用いるので出火件数が特に多くなります。時間係数はそれを考慮したものです。


わまさん
わからない事はたくさんあります。基礎知識のない私にとっては、本音をいうと大変難しい授業でした。先進的なアメリカの事例が取り上げられていましたが、日本の現状についてももっと詳しく知りたいと思いました。

かよ君
講義に使った本文について…章ごとがバラバラで全体を通して何が言いたかったのかがよくわからなかった。
Okd>ポイントをはずしていましたね。重要な点です。そこが分からなければ出席していた意味がないです。質問して欲しかったですよ。


講義について…グループの人数が多すぎて、講座もバラバラな状態だったので、ほとんど話し合いができなかった。その結果一人一人が単独で発表し、全体としてまとまりがなかったように思う。全体が見えなかったのはこのためだと思った。
Okd>大人数に関しては双峰型の欠点でしょうね。副専修の学生が多すぎます。しかも学部で初等防災学を勉強してきていない学生も多いので、大学院であるにもかかわらず概論から出発しなければならないのは教官側にとってもマイナスです。但し、グルーピングに際して色々な専攻の学生を組ませたのは意図的です。同一講座内だと刺激もホモジニアスで、おもしろくないでしょう。時間をお互いに調整できなかったのは残念ですが、私の意図を汲んでおもしろい発表をしてくれたグループもいますので、やり方次第だと思います。


すた君
今後、東海地震や小田原地震はいつ起きるかと最近言われてますが、このような被害の研究、原因の究明、地震後の被害拡大防止とかをどのように活かしていくか、そのスタンスがいまいちわからなかったです。10年後20年後50年後は今の研究や未来の研究が活かされてどのようになるのか?
どこまで、くい止めれるのかというところです。
Okd>う~ん。そこを勉強してもらっていたはずなのですが。あなたもはずしていましたね。



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