2013年度大学院都市防災学特論学生課題と解答例
出題:2013年11月18日
解答:2013年12月9日
第2回 確率現象の扱い方 解説:長谷川修一(1講座)
ある埋め立て地で,汚染物質漏洩の疑いがもたれている。漏洩の事実を確認するため、井戸での監視が検討されている。2箇所の井戸の位置は下図に示すとおりである。
●B
円/楕円: 埋め立て地
●A
漏洩があったとすれば、井戸Aで漏洩を検知できる確率は80%、井戸Bでは90%である。埋め立て地からの漏洩がなければ,いずれの井戸においても汚染物質を検知することはない。井戸設置前、技術者は漏洩発生の確率を70%と考えていた。
(a)井戸Aが設置され、汚染物質が検知されなかったとしよう。技術者はこのとき、漏洩確率をどのように考えるだろうか。
(b)両方の井戸が設置され、漏洩を検知するという事象は2つの井戸で独立であるとする。
(1)少なくとも一方の井戸で汚染物質が検知される確率はいくらか。
(2)井戸で汚染物質が検知されなかった場合、漏洩の発生はなかったと結論づけることについて、技術者はどの程度の確信を持ち得るだろうか。
(c) 井戸Aと井戸Bの設置費用は同額であり、井戸設置費用が1箇所分しかない場合、どの井戸を設置するべきであろうか。
【解答例】
A:井戸Aで漏洩を観測した事象
B:井戸Bで漏洩を観測した事象
L:実際に漏洩した事象
このとき、
P(A|L)=0.8:実際に漏洩しているときに井戸Aで漏洩を観測する確率は80%
P(B|L)=0.9:実際に漏洩しているときに井戸Bで僧衣医を観測する確率は70%
P(L)=0.7:実際に漏洩発生の事前確率は70%
また、以下のことは自明とする。
:漏洩していないときに井戸A・Bで漏洩を観測しない確率100%
(a)ベイズの定理より井戸Aで漏洩が観測されなかったときの漏洩発生確率P(L|は
P(L|
ここに、
故に、P(L|=0.2×0.7/0.44=0.318
(b)
(1)0.7=0.98
(2)ベイズの定理より、実際に漏洩していないという条件の下で、井戸A及びB共に漏洩が観測されない確率は
ここに、
故に、|
(c)
井戸Aと井戸Bの精度比較をする。
漏洩していたときの検出精度は
井戸A:P(A|L)=0.8
井戸B:P(B|L)=0.9
このとき、能力的にB>A と判断できる。
漏洩しているのに検出しない非検出確率は
井戸A: ←(1)より
井戸B:P(| L)P(L) / P() = 0.1×0.7 / (0.1×0.7 + 1×0.3) ≅ 0.189 ←同様に
能力的に、B>A と判断できる。
出題:2013年12月9日
解答:2013年12月16日
第3回 連続的確率分布関数の扱い方 解説:伊藤知明(9講座)
ある土地区画からの雨水流出量[m3/sec]は、次の確率密度関数に従う確率変数モデルで表される。
=0 その他の領域
(a) 定数cを定めて確率密度関数(PDF)を描け。
(b) この流出量は容量4m3/secの排水管で排出されるが、流出量がこの容量を超えると洪水が発生する。大雨の後洪水が発生した場合、流出量が5m3/sec未満である確率はいくらか。
(c) ある技術者が、現在の排水管を容量5m3/secの大口径排水管で置き換えることを検討している。次の大雨までに敷設替えを完了できる確率は60%であるとして、次の大雨で洪水が発生する確率はいくらか。
【解答例】
(a)確率変数Xは毎秒の流出量である。x[m3/sec]
PDFは積分すれば1.0となるので
ゆえに、
(b)累積雨水量は確率変数XのCDFで与えられるので、
0≦x≦6
洪水が発生した(X>4)という条件で、流出量5m3/sec未満(X<5)の確率は、
(c)ここで、事象Cを考える。
事象C:次の大雨までに排水管の置き換え作業完了。
このとき、P(C)=0.6
敷設完了で洪水発生したとすると、その時、X>5
敷設未完了で洪水発生したとすると、その時、X>4
よって、洪水が発生する確率P(洪水)は
)
出題:2013年12月16日
解説:2013年12月24日
第4回 同時確率の扱い方:解説 安田亨平(1講座)
ある場所における大雨時の降水量X[in]と流出量Y[feet3]の同時PMFは以下のように表される。
X=1 | X=2 | X=3 | |
---|---|---|---|
Y=10 | 0.05 | 0.15 | 0.0 |
Y=20 | 0.10 | 0.25 | 0.25 |
Y=30 | 0.0 | 0.10 | 0.10 |
(1) 次の大雨で降水量が2[in]以上となり、かつ流出量が20[feet3]を超過する確率はいくらか。
(2) 大雨の後、降雨量が2[in]を示したとする。流出量が20[feet3]以上となる確率はいくらか。
(3) XとYは独立であるか。その理由を論証せよ。
(4) 流出量の周辺PMFを求め、図示せよ。
(5) 降水量が2[in]の大雨における流出量のPMFを求め、図示せよ。
(6) 降水量と流出量の相関係数を求めよ。
【解答例】
(1) P(X≧2 and Y>20)=0.1+0.1=0.2
(2) P(Y≧20|X=2)=(0.25+0.1)/(0.15+0.25+0.1)=0.35/0.5=0.7
(3) P(Y ≧20|X=2)=0.7である。XとYが独立ならば、Xに関係なく、P(Y≧20)=0.7とらなければならない。
しかし、P(Y≧20)=0.10+0.25+0.25+0.0+0.10+0.10=0.8≠0.7
よって、YはXの影響を受けているので、両者は独立ではない。
(4) P(Y=10)=0.05+0.15+0.0=0.20
P(Y=20)=0.10+0.25+0.25=0.60
P(Y=30)=0.0+0.10+0.10=0.20
よって、Yの周辺PMFは
(5)X=2の条件付きPMFを求めれば良い。
P(Y=10|X=2)=0.15/(0.15+0.25+0.10)=0.15/0.5=0.30
P(Y=20|X=2)=0.25/0.5=0.50
P(Y=30|X=2)=0.10/0.5=0.20
よって、X=2の条件付きYのPMF:は
(6) 相関係数は以下の式で与えられる。
Xの周辺PMFは
X-1については0.05+0.10+0.0=0.15
X=2については0.15+0.25+0.10=0.5
X=3については0.0+0.25+0.10=0.35
=1×(0.05+0.10+0.0)+2×(0.15+0.25+0.10)+3×(0.0+0.25+0.10)
=1×0.15+2×0.5+3×0.35
=2.2
σX2=0.15×(1-2.2)2+0.5×(2-2.2)2+0.35×(3-2.2)2
=0.46
E(Y)=0.2×10+0.6×20+0.2×30
=20
σY2=0.2×(10-20)2+0.6×(20-20)2+0.2×(30-20)2
=40
E[XY]=ΣxyP(x,y)
=1×10×0.05+2×10×0.15+1×20×0.10+2×20×0.25+3×20×0.25+2×30×0.10+3×30×0.10
=45.5
∴ ρXY=(45.5-2.2×20)/√(0.46×40)
=0.35
出題:2014 年1月14 日
解説:2014年1月27日
第6回 ポアソン過程問題:解説 木村裕崇(9講座)
次の表はある街における1994年から2003年までの10年間の洪水発生の記録である。
年 | 洪水発生回数 | 年 | 洪水発生回数 |
---|---|---|---|
1994 | 1 | 1999 | 0 |
1995 | 0 | 2000 | 2 |
1996 | 1 | 2001 | 0 |
1997 | 1 | 2002 | 0 |
1998 | 0 | 2003 | 1 |
洪水発生はポアソン過程でモデル化できるとし、以下の設問に答えよ。
(1)上の記録に基づき、今後3年間におけるこの街の洪水発生回数が1~3回である確率を求めよ。
(2)ポアソン過程でモデル化し、観測値と理論値とを比較せよ。
【解答例】
(1)平均値ν=発生回数/年=6/10=0.6
よって、
P(Xt=1,2,3)==
=(1.8+1.62+0.972)×0.165=0.725
(2)表を書き直すと
発生回数 k | 10年間の観測数 | 理論値 |
---|---|---|
0 | 5 | 5.5 |
1 | 4 | 3.3 |
2 | 1 | 1.0 |
3 | 0 | 0.2 |
10年間における発生回数は
k=0 e-0.6=0.549 →10年間では 0.549×10=5.5回
k=1 ∴0.329×10=3.3
k=2 ∴0.0988×10=1
k=3 ∴0.0198×10=0.2
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