地震防災私論

私の地震防災論

評論やシンポジウムでの講演など、論文ではなく一般向けに解説したものを掲載してあります。
地震防災に関して日頃考えている総説的な内容です。
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1.釧路沖地震・北海道南西沖地震・北海道東方沖地震が残した教訓
日時:1995年1月12日
場所:札幌市
主催:北海道
講演会名:地震防災シンポジウムパネルディスカッション

「我が身は自分自身で守れ」。今でこそ、マスコミ等でふつうに聞くフレーズである。しかし、この警句が日本で市民権を得たのは、1995年阪神大震災以後である。阪神大震災以前にこのような警句を表立って聞いたことは私はない。このシンポジウムで、私が公の場でこの警句を披露したあと、楽屋にまで尋ねてきてくれた方がいた。消防署関係の方であった。私の手を取り、「よく言ってくれた。私たちが常日頃思っていたことでした。でもそのようなことを言ったら、許されません。公的機関が国民を守れないとは何事かと・・・。」私は、そのとき日本の現状をありのままに述べたつもりであったが、その反響の大きさに驚かされた。数日後、この件に関して、NHKより取材があったが、概して私の意見に納得してくれた方が多かったと記憶している。建前と本音の使い分けは、非常事態下では受け入れがたい・防災は本音が基本なのである。そのシンポジウムの3日後である。阪神淡路大震災が発生し、「我が身は自分で守れ」のフレーズが大手を振って歩き出した。


2. 地震から安心して暮らすために
発行日:1996年6月27日
編集者:札幌市教育委員会文化資料室
書籍名:さっぽろ文庫 77 地形と地質

阪神淡路大震災後、「我が身は自分で守る」ことが当然のことのように謳われるようになった。しかしいざ守るとなると、何をして良いのか見当がつかないし、そもそも、守る・防ぐというネガティブなことには、人間、力がわいてこないものである。発想を換え、「守る」のではなく、快適を生み出す「攻め」が実は防災につながることを、意識してはどうだろうか。攻めの防災のすすめである。
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3. わが身とわが町・わが国を守るために
日時:1998年1月15日
場所:帯広市
主催:帯広市
講演会名:’97帯広防災コミュニティ 防災シンポジウム基調講演

帯広市民を対象とした市民防災講座である。地震の基礎知識と帯広市の地震環境・被災ポテンシャルについて触れている。そして、公の防災と個人の防災とでは役割が異なることを解説し、行政が考えるべきことと住民が考えるべきこと、協働することにより効果的な防災が可能となることを説く。
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4. 震度について
日時:2001年8月3日
場所:札幌市
主催:土木学会
講演会名:2001年地震工学研究発表会パネルディスカッション

震度は、地震防災の研究者と防災を実践する住民・行政・実務者とのコミュニケーションを計るための地震動に関する共通尺度として重要である。研究者側からの尺度に対する要求、すなわち「使いやすさ(事象を正確に記載できること、尺度の物理的意味が明確であること、数式表現できるように間隔尺度であること)」を満足し、かつ住民・行政・実務者側からの要求、すなわち「分かりやすさ(被害との連想性が良いこと・感覚的量的把握が可能なこと・覚えやすい等級区分であること)」を同時に満足するからである。
震度の有用性・震度の利用法・震度の理解の仕方について述べている。
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5. 北海道の地域性と地震防災
日時:2001年9月24日
場所:東京
主催:日本建築学会
講演会名:2001年度日本建築学会大会災害部門パネルディスカッション

地震防災に関わる地域性を種々の観点より整理する。普通、地域性というと地震動入力(ハザード)に関する地域性を言う場合が多い。しかし、防災はハザードのみでは決まらない。他にも、バルナラビリティや都市がおかれている社会地理環境にも地域差があり、それが特有の防災体制を強いることにもなる。
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6. 震災時における建物倒壊と人命救助について
日時:2001年10月19日
場所:横浜市
主催:神奈川県
講演会名:平成13年度神奈川県産学交流研究発表会招待講演

地震時の死者低減の出発点は、死者発生のメカニズムの理解にある。地震が発生し、数秒後に建物が倒壊し内部空間が損失する。そこで瓦礫にトラップされた居住者はSARを待つ。建物構造と死亡率の関係、負傷原因と死亡転帰の関係等、建築構造と災害医学の資料を取り混ぜ、そのメカニズムについて総合的に解説する。死者低減の方策についても述べる。                                                           ⇧ページ上部へ戻る
7. 大都市圏の3次元地下構造モデルの地震防災への利用
日時:2001年11月28日
場所:東京・日本学術会議
主催:日本地震工学会
講演会名:第1回日本地震工学研究発表・討論会

地震工学研究発表討論会におけるオーガナイズドセッションでの発表梗概である。大都市圏で実施されている3次元地下構造モデルによる地表面地震波シミュレーションの、防災への利用法について、Hazard分布としての利用法及びRisk分布としての利用法より整理し、種々の防災への活用の仕方を提案している。また、阪神淡路大震災以降、自治体で行われるようになってきた「地震被害想定」について、防災的観点より現状を批判し、「地域危険度診断」としてのスタンスを取り入れるべく新たな提案を行っている。
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8. 北海道の防災の主導レベル~個人的被災体験伝承から防災行政システムまで~
日時:2002年3月4日
場所:北海道大学学術交流会館
主催:北海道大学
講演会名:昭和27年十勝沖地震から50年地震防災講演会

阪神淡路大震災後に大きな変革をみた人と組織の防災活動を、【個人】-【地域コミュニティ】-【公】で3括りにし、それぞれに見逃されている現状における問題点と課題を整理した。個人と地域コミュニティに関する問題は、わが国全体に当てはまる問題である。公(行政)の問題は、北海道に特化させ、上記5のテーマ(北海道の地域性と地震防災)のダイジェストとなっている。
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9. 安全の創造もオーダーメイド
発行日:2002年7月
編集者:北海道大学広報委員会
雑誌名:Littera Populi 12号 2002年夏号 北海道大学広報誌 季刊

閉塞感が漂う21世紀。大学にも新しい価値観が求められている。一大学人として、新たな研究の方向性を打ち出すようにとの外圧を、最近、頓に感じるようになってきた。そのような外圧は別にしても、科学研究のみならず、社会の潮流として、「個」はキーワードであると思っている。それを防災に持ち込むセンスを大切にしたいと思っている。
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10.被災建物にまつわる人的被害事象の研究動向とこれからの対策
発行日:2003年3月
編集者:日本建築学会
雑誌名:建築雑誌 2003年3月号 Vol.118 No.1503 特集巨大地震を前にして

地震で人が死ぬという極めて衝撃的事象にもかかわらず、人的被害に関する研究は意外と少ない。当研究室はその数少ない研究室の一つである。ただ単に死者数を予測することに止まらず、死者を減らすためのアプローチを提示する。
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11.災害に強い社会資本整備のあり方
日時:2004年2月16日
場所:札幌ガーデンパレス
主催:北海道
講演会名:「建設技術交流促進フォーラム」~災害に強い安全な国土づくり~

20世紀を生き抜いてきた多くの方は今から二・三十年前、「21世紀」という言葉に未来を感じ、明るい期待感を持ってその到来を待ち望んでいたのではないだろうか。いざ、その新世紀に突入してどうだろう。この先細り感・出口の見えない閉塞感が日本全体を覆っている・・・そう感じている人は多いはずである。この国は、国の全体的底上げを担ってきた国民総中流政策を捨て、二極分化に進んでいる。いわゆる、勝ち組と負け組である。地域も二極分化が進んでいる。残念ながら、北海道は今のところ負け組である。その理由はかなり根深いところにあるらしい。短期的解決策はない。環境学者の言い分に耳を傾けてみよう。彼らなりの提案がある。閉塞打破のための社会資本整備の提案である。話を防災に転じよう。災害に強い国づくり・まちづくりの観点から社会資本整備のあり方を考えた場合、環境学者からの提案と歩調の合うものが意外と多いのに気づく。地域の活力増進が地域の安全も担保する。こんな一石二鳥の社会資本整備のあり方を考えてみたい。

 本講演の指摘の一つに、防災対策としての高規格道路ネットワーク整備の必要性がある。2003年十勝沖地震の北海道の災害をみての意見であった。当時、道路公団民営化盛んなりし頃で、道路建設を勧める意見などに耳を傾ける人は殆どいなかった。その翌年である。新潟県中越地震が発生し、正に貧弱な道路網が寸断し、中山間地域の集落は孤立した。災害発生の芽のうちにわが国の脆弱性を見通す想像力・洞察力が求められている。
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12. 防災戦略としての対災害基盤整備向上
日時:2004年9月15日
場所:ロイトン札幌
主催:社団法人日本技術士会
パネルディスカッションテーマ:「都市防災」-明日の防災戦略を考える-

技術士は都市防災に如何に貢献できるか。これが、札幌市で開催された第31回技術士会全国大会・第4分科会(都市防災)の掲げたテーマであった。私の普段からの主張は、予防型(Resistance)としてのハード整備と発災対応型(Resilience)としてのソフト対応との協働政策にある。しかしあえて、技術士会という場に鑑み、ハード型優先の論理展開を試みた。もちろん、ソフト対応を否定するものではなく、ソフト対応をより円滑に遂行するために災害の絶対値を対応組織の経験値内に押さえ込むことの必要性を訴えたつもりである。これはハード防災の役割である。
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13. 家族を地震で傷つけないための家庭でできる防災マネジメント
日時:2005年2月9日
場所:名古屋市中消防署
主催:名古屋市中消防署
市民防災講演会

日時:2014年6月14日
場所:北海道大学理学部
主催:北海道大学附属地震火山研究観測センター
北海道大学公開講座(毎年6月頃に開催されています)

わが身と家族を守るために何をすべきか。防災講演会の主題はどこも似たり寄ったりである。しかし、当研究室の研究成果は少し違う。期待して欲しい。死なないために・傷つかないために何をすべきか。具体的な処方箋を配付資料(pdf)で提示する。わが家の耐震診断を行い、その診断値から地震の時の家の被害状況を知ることが出来る。そのために当研究室で開発した損傷度関数を用いる。関数は複雑だが、グラフを使って簡単に診断可能。その他にも、地震で怪我をしないための研究成果がチェックシート形式で公開。
配付資料を札幌版(他の地域でも利用できます)にバージョンアップしました。現在、2014年版です。

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